長崎県平戸市大久保町に佇む「旧角屋主屋(きゅうすみやしゅおく)」は、明治時代後期に建てられた木造二階建ての歴史的建物で、国の登録有形文化財にも指定されています。田助湾に面して建ち、かつては炭屋兼船宿として地域の交流拠点となっていました。
幕末には、薩摩藩や長州藩の志士たちの定宿としても利用され、西郷隆盛や高杉晋作、桂小五郎らがこの地を訪れたと伝えられています。坂本龍馬もその一人。近隣の旧永山邸(明石屋)を拠点に活動していた龍馬が、この角屋を訪れていた記録も残されており、志士たちの思惑が交差した場所として、当時の歴史を今に伝えています。
そんな旧角屋主屋が、平戸市で始まった「アルベルゴ・ディフーゾ(分散型ホテル)」の一施設として生まれ変わりました。運営を手がけるのはオランダ出身のレムコー・フロライクさん。主屋の趣を残しながら、地域に開かれたゲストハウスとして新たな役割を担っています。
歴史の面影を宿しながら、まちの暮らしとともに息づく空間として、再び人々を迎え入れる場所となっています。